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インタビュー

株式会社THREE 中野浩明さん|憑依し、どこまでこだわり抜けるか。デザインを通してブランドの価値を高める

2022.08.07

| Interviewee |

株式会社スリー

中野浩明(なかの ひろあき)
新潟市出身。バンド・DJに没頭した学生時代を契機に、新潟市内の音楽関連会社へ就職。アーティストのマネジメントに加え、イベントフライヤーやポスター制作を担当したことから、デザインへ関心を持ち、プリントデザインを行う「刷屋」へ。2015年、デザイン部門が独立して生まれた「株式会社THREE」に創業メンバーとして携わる。現在はディレクター兼デザイナーとして、お客様の課題解決に向けた支援を行なっている。

“かっこいい”を掘り続ける。デザインとDJの感覚が同じなんです

ーデザインに興味を持ったきっかけはどこからでしょう?

元々ずっと音楽が好きなんです。中学時代はバンドに明け暮れ、高校生からはDJを始め、クラブカルチャーを知って……。なので最初は音楽業界に就職したんですけど、そこでデザインの面白さに触れたことをきっかけに、どんどんと突き詰めてみたくなりました。

DJとデザイン。ハマった時の感覚が、とても似ていたんですよね。

DJって作曲・編曲ができるわけではなく、アーティストの曲を使ってプレイする。デザインだって、僕はイラストが描けるわけでもフォントを作れるわけでもなく、言ってみれば、一人では何も生み出せないんですよ(笑)

でもDJは曲をmixすることで、そこにしかない空間を作り上げることができる。デザインも人が生み出したフォントや写真、そしてお客様の事業を掛け合わせて新しい価値を生むことができる。

DJの頃は“音を掘る”のが好きで、良い音と出会うたびに興奮していた記憶がありますが、今はデザインでそういった感覚が生きています。とにかくかっこいいものが好き。

自分がかっこよくなりたいというよりは、かっこいいものを追い求め続けたいタイプですね。
デザインにおいても、自分がかっこいいと思うクリエイティブを誰よりも早く見つけ、mixしたいと常に思っています(笑)

ーデザインは独学からのスタートとお聞きしました。デザイン力はどのように高めたのでしょうか?

当初は海外のデザイン関連の動画を翻訳して、見よう見まねで学んでました。ですがWebデザインを仕事にするにあたり、コードのような専門知識は一人で習得するには難しく、一年間学校に通い基礎知識を学びました。

その後、仕事として意識が変わっていったタイミングは、作ったものを不特定多数の人の目に触れる場所に出していったことですね。

僕の場合はTwitter。デザイン業界の人がアンテナを張り、色んな方が集まる場所です。そこに実名で発信していくのは、結構勇気のいることで。

それまで以上に、仕事を受けた瞬間から責任を感じるようになりましたし、質へのこだわりや、言語化への意識も変わっていきましたね。

Web制作におけるこだわりは「意図がわかると、もっといい」

ー株式会社THREEには、どんな依頼がありますか?

グラフィックデザインもするのですが、発信内容を意図的にWeb中心にしていることもあり、現在は9割の依頼がWeb関連です。

Web制作は論理的な部分が求められ、目的・意図の説明責任がグラフィックよりも強い。
使う人や対象ユーザーのためという根拠に基づいて作るので、作家タイプではない自分には向いているのかな、と(笑)

依頼をいただく際ですが、お客様が答えを持っていることはないと思っています。だって答えがあるなら、僕たちの意味はないですから。デザインという手法を使い、お客様の思いや課題を整理し、解像度を上げ、具体化していくのが僕たちの仕事です。

あとは弊社は社外のパートナー企業の方に声をかけ、それぞれの強みを生かしたチームを作ることも多いですね。その際はもちろんお客様にも協業先を伝えます。目的に応じて一番パフォーマンスの良い形を考えています。

ー中野さんが制作された、新潟のアイドルユニット「RYUTist(りゅーてぃすと)」さんのサイトが印象的です。CDジャケットまで担当しているんですね。

RYUTistはプロデューサーが元々DJ仲間ということで、ご縁がありました。彼は物事に対する感度が高くて、仕事をしていて刺激的で楽しいんですよ。なので、チャレンジングなことを一緒にやっています。

RYUTist WEBサイト
https://ryutist.jp/

RYUTistっていわゆるアイドルではなく「楽曲派アイドル」と呼ばれていて。全国のコアな音楽ファンに支持されていますし、楽曲提供者の人選や音楽に対する熱を強く感じ、その考え方に僕自身も共感してます。

なので「曲に触れてほしい」という思いを届けるため、サイトのメインビジュアルはCDジャケットにしています。

RYUTistのサイトに関わらずなんですが、”作る時間”よりも”考える時間”の方が圧倒的に長いです。考えがまとまらないうちに手を動かしても、良いものができないってわかっているので。そこまでが長い……(笑)まとまってしまえば、自然と手は動きます。

あとは、今日はインタビューなので制作の背景をお伝えしましたが、説明を加えずにユーザーの皆さんにサイトの意図を想像してもらうことも好きです。

“意図まで伝わらなくてもパッと見てかっこいい。意図がわかったら、もっとかっこいい”
そんなデザインを意識しています。

ー他にも印象的なお仕事があれば教えてください。

佐賀県にあるお豆腐屋さん「佐嘉平川屋」のサイト制作ですね。

佐嘉平川屋ブランドサイト
https://saga-hirakawaya.jp/brand/

こちらのブランドサイトは評価をいただき、デザインキューレーションサイト「S5-Style」のキュレーター・田渕さんが選ぶ2021年の総まとめにもピックアップいただきました。

いち読者として、毎年楽しみにしているコンテンツに、まさか自分が制作したサイトが選ばれるなんて…めちゃくちゃ嬉しかったです。

お豆腐って手頃なイメージだと思うんですけど「佐嘉平川屋」のお豆腐は高価なんですよ。でも、食べればわかる価格への納得感。作り手のこだわりが一口ひと口から伝わってきます。そんなイメージを届けるために、ブランドサイトを制作しました。

ブランドサイトはECサイトとは違い、ユーザーが何度も繰り返し訪れる場所じゃないんです。なので、第一印象でいかに姿勢を伝えるか。そこにこだわって作ったものです。

一方で、ECサイトは「誰もがわかりやすく、買いやすい」を意識して棲み分けています。

どこまでお客様に憑依できるか。裁量と責任を持つからこそ楽しい

ー中野さんが、クリエイティブで心掛けていることは何でしょうか?

一つは「自分ごとにすること」。誰かに言われたことをそのままやるなら、自分じゃなくてもいいんです。もっと早く、安く作ってくれる方は沢山いるので。

イニシアチブは自分が取る感覚で、お客様の頭にぼんやりとあるものの解像度を上げていくことを大切にしています。

また、表現におけるブランディングで大事なのは、視覚情報の一貫性だと思います。なのでWebサイトを依頼された場合、サイト自体がその中核を担うようにデザインをしていますね。

「Webサイトはこのような理由でデザインしたので、他に展開する時もここは活かしましょう。この部分は気をつけましょう」というようなイメージですかね。

とにかく自分の責任にするというか。そのほうが僕自身、仕事をしていて楽しいんです。

ーデザインをする中で、他にも大切にしていることがあれば教えてください。

“具体”と“抽象”の往来は大切にしています。

自分で解釈するときは抽象化して、相手に伝えるときはできる限り具体的に。相手の“具体”を“具体”で受け取るとそこで終わりなんですけど、そこから本質を導くのがデザイナーの得意分野です。

その視座をどこまで高く挙げられるか、手を動かすときはどこまでミクロの世界にこだわれるか。この視点を常に意識しています。

ー未来のクリエイターもこの記事を見てくれていると思います。もし何か、メッセージがあれば。

デザイナーは、自分の“好き”を譲らなくていいと思います。僕は、自分がいいと思えないものは、世に出しません。お客様からのご指摘であっても自分が納得できないのなら、その要望をはるかに超えるクールなサイトを作ってやろうと思ってしまいます(笑)

裁量がないと仕事って面白くないんです。裁量が大きければ責任も伴いますが、デザイナーはどんどん裁量を持つべきだと思うんですよね。

最初にお伝えした通り、僕自身はずっとDJやってるのと同じ感覚です。だからストレスもないけど、100%を求められたら150%で返せる仕事しかやっていません。

どんなに偉そうなことを言っても、質は伴わなければいけない。ちゃんと、自分が作ったものの説明ができなければいけません。そこは厳しいお仕事です。

作る力と話せる力。その二つを両輪で回せると“かっこいい”デザイナーになれるんじゃないかと思います。

クオリティだけじゃない。自分にこだわる姿勢が光りを生む

ー新潟のクリエイティブの未来についてはどう思いますか?

新潟のデザイナーが全国から引き合いをもらうことは可能だと思っていますし、クリエイターがひしめく関東と肩を並べても、選ばれる存在になれると思います。

では、どうやって選ばれるのか。僕のようにクライアントワークを主とし、アウトプットで勝負するデザイナーは、作ったものの評価からは逃れられません。だから、自分の名前と成果物を自信を持って出せるよう、クオリティにこだわることしかないと思っています。

そして同時に、自分の強みがどこにあり、どうみせるべきかを考える。これも一つのデザインなので、大切にすべきポイントだと感じています。

「なんでデザインやってるんだろう?」を一度冷静に振り返るのも良いかもしれません。

デザイナーとしての欲求に素直になる。

そこから、どこまで自分にこだわって、存在感を出せるか。

この意識が、新潟のクリエイティブの未来を作るのではないでしょうか。

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